変形性膝関節症

このようなお悩みはありませんか?
膝の痛み
  1. 朝起きたときのこわばりと動きにくさ
  2. 階段の上り下りでの痛み
  3. 膝の腫れや熱感
  4. 歩行中の不安定感
  5. 長時間座った後の痛み

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症(膝OA)は、膝関節の軟骨が摩耗し、関節全体に炎症や変形が生じる疾患です。この疾患は、特に中高年の方に多く見られ、進行すると日常生活に深刻な影響を及ぼします。以下では、この疾患の詳細について解説します。

関節軟骨の役割と変形性膝関節症のメカニズム

関節軟骨は、骨同士が直接接触しないようにクッションの役割を果たしています。また、関節内の滑液(かつえき)によって摩擦を減らし、スムーズな動きを可能にしています。

しかし、以下の理由で軟骨が劣化すると、変形性膝関節症が進行します:

  1. 軟骨の摩耗 年齢や過剰な負荷により、軟骨が徐々に摩耗します。
  2. 骨同士の接触 軟骨がすり減ると骨同士が直接接触し、痛みや炎症が発生します。
  3. 骨棘(こつきょく)の形成 関節の変形が進むと、骨棘と呼ばれる骨の突起が形成され、さらに関節の動きを制限します。
  4. 炎症と痛み 軟骨の破片や摩擦が関節内で炎症を引き起こし、腫れや痛みが生じます。

初期症状から進行段階まで

変形性膝関節症は徐々に進行する疾患です。その進行段階を以下に示します:

1. 初期段階

  • 違和感や軽い痛みがある。
  • 長時間の歩行や運動後に症状が現れる。

2. 中期段階

  • 膝の腫れやこわばりが強くなる。
  • 階段の上り下りや立ち上がりが困難になる。
  • 膝が安定せず、「カクン」と崩れる感覚を伴う。

3. 末期段階

  • 痛みが慢性化し、安静時にも症状が現れる。
  • 関節の変形が著しく、日常生活に大きな支障をきたす。

変形性膝関節症の発生率とリスク

日本国内では、特に60歳以上の人口の中で高い発生率が報告されています。以下のリスク要因が影響を与えると考えられています:

  • 加齢:軟骨の再生能力が低下するため。
  • 性別:女性は閉経後、ホルモンバランスの変化により発症リスクが高まります。
  • 肥満:体重が増えると膝関節への負荷が増加します。
  • 遺伝的要因:家族歴がある場合、発症リスクが高くなります。
  • 職業や生活習慣:長時間の立ち仕事や膝を酷使する動作が原因となることがあります。

診断方法

変形性膝関節症は以下の方法で診断されます:

  1. 問診:症状の詳細や生活習慣についてのヒアリングを行います。
  2. 触診と視診:膝の腫れや変形、痛みの箇所を確認します。

次のセクションでは、変形性膝関節症の原因について詳しく解説します。

変形性膝関節症になる原因は?

変形性膝関節症(膝OA)の発症にはさまざまな要因が関与しています。これらの要因を理解することで、予防や適切な対応が可能になります。以下では、主な原因を詳しく解説します。

1. 加齢による軟骨の劣化

加齢は変形性膝関節症の最も一般的な要因の一つです。加齢に伴い、軟骨の再生能力が低下します。また、関節液の分泌量が減少するため、関節の潤滑が不十分になり、軟骨が摩耗しやすくなります。

年齢が進むにつれて起こる変化

  • 軟骨細胞の減少
  • 関節液の粘性の低下
  • 骨の密度が低下し、摩擦が増加

2. 過度な負荷

膝に過度な負荷がかかると、軟骨がすり減りやすくなります。この負荷は以下のような要因で発生します:

  • 肥満:体重が増えることで、膝関節にかかる圧力が大きくなります。
  • スポーツや運動:ジャンプやランニングなど、膝に強い負担をかける動作を繰り返すことで軟骨が摩耗します。
  • 長時間の立ち仕事:日常的に立ったままの作業が多いと、膝への負担が増えます。

3. 外傷や膝のケガ

過去の膝のケガ(例:半月板損傷や靭帯断裂)は、変形性膝関節症のリスクを高めます。これらのケガが原因で関節の安定性が損なわれると、軟骨への負担が集中し、早期の摩耗につながります。

主な外傷例

  • スポーツによる膝の衝撃
  • 交通事故による膝の損傷
  • 転倒による膝の打撲

4. 遺伝的要因

家族歴がある場合、変形性膝関節症を発症するリスクが高まることが知られています。遺伝的な影響により、軟骨の質や関節の形状が変化しやすい体質が引き継がれることがあります。

5. 筋力の低下

膝を支える筋肉(特に大腿四頭筋)が弱いと、関節に直接的な負担がかかりやすくなります。筋力が低下すると、関節の安定性が損なわれ、変形性膝関節症のリスクが高まります。

筋力低下の原因

  • 運動不足
  • 加齢による筋肉量の減少
  • 長期間の安静や不活動

6. 女性特有のリスク

女性は男性に比べて変形性膝関節症を発症しやすいとされています。その理由には以下のような要素が挙げられます:

  • ホルモンの影響:閉経後のホルモンバランスの変化が軟骨の劣化を進める可能性があります。
  • 骨密度の減少:女性は骨密度が低くなる傾向があり、関節の安定性が低下します。

7. その他の要因

  • 職業的要因:重い物を持つ作業や膝を頻繁に使う動作を伴う職業はリスクを高めます。
  • 生活習慣:不適切な食事や喫煙など、全身の健康に影響を与える要因も関節の健康に悪影響を与えます。

原因の複合的な影響

これらの要因は単独で発症を引き起こすこともありますが、多くの場合は複数の要因が重なり合って影響を与えます。例えば、肥満による負荷と筋力低下が同時に起きることで、変形性膝関節症の進行が加速することがあります。

次のセクションでは、変形性膝関節症を放置した場合の影響について詳しく解説します。

変形性膝関節症を放置・悪化するとどうなるの?

変形性膝関節症をそのまま放置すると、症状が進行し、膝関節だけでなく全身の健康や生活の質にも悪影響を及ぼす可能性があります。このセクションでは、放置による具体的な影響や悪化のリスクについて解説します。

症状の悪化

1. 痛みの増加

初期段階では動作時のみ感じる軽い痛みも、進行するにつれて慢性化し、安静時でも痛みを感じるようになります。特に夜間の痛みが強くなることが多く、睡眠障害を引き起こすこともあります。

2. 可動域の制限

膝関節の軟骨がさらに摩耗し、炎症が続くことで、膝を十分に曲げたり伸ばしたりすることが困難になります。この可動域の制限は日常生活に直接的な支障をきたします。

3. 関節の変形

放置すると、骨棘(こつきょく)の形成や関節自体の変形が進行し、膝の見た目が変わるだけでなく、動作の安定性も著しく低下します。

生活への影響

1. 日常生活の制限

  • 歩行困難:痛みや可動域の制限により、短い距離の移動さえ困難になることがあります。
  • 階段の使用困難:特に階段の上り下りが難しくなり、自宅内での移動に制限が出る可能性があります。
  • 家事や仕事の負担:立ち仕事や体を動かす作業が困難になり、家事や仕事を続けることが難しくなることがあります。

2. 精神的な負担

長期間の痛みや動作制限は、精神的なストレスや不安感を引き起こします。また、活動範囲が狭まることで孤立感を感じることもあります。

3. 全身への影響

膝の痛みから体をかばう動作を繰り返すと、他の関節や筋肉に負担がかかり、腰痛や股関節痛を引き起こすことがあります。さらに、運動不足により体力や筋力が低下し、肥満や心血管疾患などのリスクが高まる可能性もあります。

合併症のリスク

1. 関節炎の進行

放置すると炎症が広がり、他の関節にも影響を及ぼす可能性があります。また、炎症が慢性化すると関節内の組織に不可逆的な損傷を引き起こします。

2. 筋力の著しい低下

膝を動かすことを避けるようになると、周囲の筋肉(特に大腿四頭筋)が急速に衰えます。筋力が低下すると膝の安定性がさらに損なわれ、症状が悪化します。

3. バランス能力の低下

膝関節の変形や筋力低下により、転倒のリスクが高まります。特に高齢者の場合、転倒による骨折や二次的な障害のリスクが増加します。

長期的な放置の危険性

変形性膝関節症が進行すると、人工関節置換術(膝の人工関節への置き換え手術)が必要になることがあります。この手術は症状を緩和する効果がありますが、回復に時間がかかるため、できるだけ早期に治療を開始することが望ましいです。

早期対応の重要性

変形性膝関節症の初期段階で適切な治療を行うことで、進行を抑え、生活の質を保つことが可能です。次のセクションでは、具体的な治療方法やセルフケアの方法について詳しく解説します。

変形性膝関節症の治療方法・セルフケアの方法は?

変形性膝関節症の治療は、症状の進行度や患者さんのライフスタイルに合わせて選択されます。ここでは、医療機関で受けられる治療と、自宅で行えるセルフケアの方法を詳しく解説します。

医療機関での治療方法

1. 保存療法

保存療法は、手術をしない治療方法です。

  • 物理療法 以下の方法が行われます:
    • 超音波療法:炎症を軽減し、血流を促進します。
    • 温熱療法:痛みを和らげ、関節の柔軟性を向上させます。
    • 筋力トレーニング:膝周囲の筋肉を強化し、関節の安定性を高めます。
  • 装具療法 膝のサポートを目的とした装具やインソールを使用することで、負担を軽減します。

2. 手術療法

保存療法で改善が見られない場合、手術が検討されます。                     この場合は当院では整形外科への紹介状も作成いたします。

  • 関節鏡視下手術:小さな切開から関節内を修復する手術で、軟骨の損傷を除去したり、滑膜を取り除いたりします。
  • 高位脛骨骨切り術(HTO):膝の荷重バランスを調整するために骨を切り、膝への負担を軽減します。
  • 人工関節置換術:症状が重度の場合、損傷した関節を人工関節に置き換える手術が行われます。これにより、痛みを大幅に軽減し、日常生活の質を向上させることができます。

セルフケアの方法

1. 適切な運動

膝関節を動かすことは重要ですが、過剰な負荷を避ける必要があります。

  • ウォーキング:平坦な道を歩くことで、関節を適度に刺激します。
  • 水中運動:水中での運動は関節への負担を軽減しつつ筋力を鍛えます。
  • ストレッチ:膝周りの筋肉を柔軟に保ち、関節の可動域を維持します。

2. 体重管理

体重を適切にコントロールすることで、膝関節への負担を減らすことができます。

  • バランスの取れた食事を心がけ、また食事だけでなく運動も行いながら筋力と体重のバランスをとっていきましょう。 

3. サポートアイテムの活用

  • サポーターや杖を使用することで、膝への負担を軽減できます。
  • 靴底が柔らかいウォーキングシューズを選ぶことで、衝撃を吸収します。

4. 痛みを和らげる方法

  • 温める:入浴や温湿布で血流を促進し、痛みを緩和します。
  • 冷やす:腫れや炎症がある場合は冷湿布を使用します。
  • 症状によっては上記の使い分けがあるのでぜひ相談ください。

5. メンタルケア

長期間の痛みや制限は、精神的な負担を引き起こすことがあります。趣味やリラクゼーション法を取り入れ、ストレスを軽減しましょう。

早期の治療とセルフケアが鍵

変形性膝関節症は早期に対処することで進行を遅らせることができます。医療機関での適切な治療と、自宅でのセルフケアを組み合わせることで、日常生活の質を維持しましょう。

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